CNNが独占契約！Kalshi予測市場、10億の資金調達で評価額が2倍の110億に

米国コンプライアンス準拠の予測市場「Kalshi」は、CNNと独占提携を発表し、同メディアの公式予測市場パートナーとなった。CNNはKalshiのリアルタイムイベント確率をニュース番組、デジタルプラットフォーム、SNSコンテンツに統合し、未来のトレンドを読み解く。この動きは、予測市場が主流メディアの情報源の一つとして正式に認められたことを象徴している。同時にKalshiは10億ドルのEラウンド資金調達を完了し、評価額は倍増して110億ドルとなった。

CNNとKalshi独占契約でニュースのストーリーが変わる

（出典：X）

CNNとKalshiの提携により、CNNはAPIを通じてリアルタイム更新される予測市場データを取得できるようになり、政治、文化、ニュース、天気など多様なイベントをカバーする。Kalshi共同創業者兼CEOのTarek Mansourは、従来のニュースが「起きたこと」の記述に重点を置いているのに対し、予測市場データは「未来」の知識ギャップを補完できると指摘する。

今回の提携は独占契約であり、CNNはライセンス料を支払う必要がないが、他の予測市場との提携も禁じられている。これはKalshiがメディア領域へ進出する野心を示している。この独占性はKalshiにとって大きな戦略的勝利であり、実質的に競合のPolymarketなどをCNNの報道体制から排除する形となる。CNN側としては他の予測市場と柔軟に連携できなくなるが、米国唯一の完全コンプライアンス予測市場であるKalshiの独自価値を得ることができる。

このような提携モデルはメディアとテックプラットフォーム間では一般的ではない。通常、メディアはデータソースの多様性を保ち、単一ベンダーへの依存を避ける。しかしCNNはKalshiと独占契約を結び、Kalshiのデータ品質とコンプライアンスへの信頼の高さがうかがえる。ビジネス面でも、将来の収益共有や共同プロダクト開発の道を開く可能性がある。

Kalshiは選挙開票後、短時間で結果を正確に予測できることを強調しており、この即時性と正確性こそがCNNが提携を決めた重要な理由だという。2024年米大統領選でもKalshiや他の予測市場の予測精度は従来の世論調査を大きく上回り、主流メディアからも高い評価を受けた。

Harry Enten主導の全面統合テロップが間もなく登場

この統合はCNNチーフデータアナリストHarry Entenが中心となり、予測市場トレンドをテレビ番組、CNN+有料ストリーミング、SNSプラットフォームに組み込む。Entenはデータ駆動の分析スタイルで知られ、番組ではグラフや統計モデルを用いて政治や社会トレンドを解説してきた。Kalshiの予測市場データを分析ツールとして加えることで、レポートの先見性が飛躍的に強化される。

CNNはまた、Kalshiベースの「リアルタイム予測テロップ」を導入し、編集チーム全体がKalshiのリアルタイムデータを活用してグラフ作成、ファクトチェック、トレンド分析を行う。この深い統合により、Kalshiのデータは専門分析番組のみならず、日常のニュース報道、速報、解説番組にも登場する可能性が高い。

特に注目されるのがリアルタイム予測テロップの導入だ。このビジュアル表示によって、視聴者はニュース視聴中に市場が未来のイベントをどう評価しているかを即座に把握できる。例えば、FRB政策会議の報道時には「利下げ確率：89%」、地政学的危機の報道時には「衝突拡大確率：34%」などがテロップで示される。この情報提供スタイルは、視聴者のニュース理解を「何が起きたか」から「これから何が起きそうか」へと拡張する。

KalshiとCNN統合の4つの側面

テレビ番組：Harry Entenのデータ分析番組でKalshiの確率を常時引用

リアルタイムテロップ：画面下部に主要イベントの予測確率をスクロール表示

デジタルプラットフォーム：CNNのウェブサイトやアプリにKalshiのインタラクティブ予測チャートを埋め込み

SNSコンテンツ：Twitter、InstagramなどCNN公式アカウントでKalshiデータを引用

この全方位的な深い統合は、従来の単なるデータ提携を超え、Kalshi予測市場がCNNニュースのインフラの一部となることを意味する。

予測市場が主流メディアを席巻　YahooやGoogleも追随

CNNだけでなく、Yahoo FinanceやGoogle Financeも先月Polymarketと連携し、主流メディアや金融プラットフォームが予測市場を若年層の集客やデータジャーナリズム強化の新兵器と見なしている。CNNとKalshiの提携も、予測市場がメディア情報基盤の一環として中心に据えられつつあることを示す。

このトレンドはメディア産業の深い変化を反映している。従来型ニュースの価値は疑問視されており、SNS時代では出来事発生後の報道よりも現場映像や当事者の投稿の方が速く拡散される。メディアは独自の付加価値を提供する必要があり、「予測と分析」こそがその象徴だ。予測市場データは、視聴者に「何が起きたか」だけでなく、「市場が何が起きると見ているか」を伝える新たな差別化ツールとなる。

各メディアが異なる予測市場パートナーを選ぶ点も興味深い。Yahoo FinanceとGoogle FinanceはPolymarketを選択しているが、これは同社の取引量や国際ユーザー基盤の広さが理由と考えられる。一方でCNNは米国コンプライアンスとCFTC規制のKalshiを重視した。主流メディアにとって、規制下のプラットフォームとの提携は法的・評判リスクの軽減につながる。

この競争環境は予測市場業界全体にとってプラスだ。複数の大手メディアや金融プラットフォームが同時に予測市場データを採用すれば、業界の正当性と主流受容度は一気に高まる。ユーザーも徐々に、未来を考える際に市場確率を参照するのが当たり前になり、専門家の意見や世論調査だけに頼らなくなるだろう。

10億ドル調達を支えるトップ投資陣

CNNとの提携発表と同時に、Kalshiは10億ドルのEラウンド資金調達を完了。Paradigmがリードし、a16z、セコイア・キャピタル（Sequoia）、アーク・インベスト（ARK Invest）が参加。評価額は110億ドルに倍増した。この急成長は、投資家がKalshiのビジネスモデルと成長性に強い自信を持っていることを示す。

Paradigmは暗号分野最大級のVCで、運用資産は130億ドル超。今回主導したことで、Kalshiがブロックチェーン技術の実用化成功例として評価されていることが分かる。a16z（Andreessen Horowitz）はシリコンバレー有数の著名VCで、暗号ファンド規模は70億ドル超、ネットワーク効果のあるブロックチェーン応用へ投資している。

セコイア・キャピタルはGoogle、PayPal、Stripeなどの巨大テック企業を支援してきた世界トップVCで、単なる資金だけでなく大規模運営ノウハウや企業顧客リソースももたらす。アーク・インベスト（ARK Invest）は著名投資家Cathie Wood率いる破壊的イノベーション投資で有名。ARKの参加は、Kalshiが従来の世論調査や分析産業を変革する革命的プラットフォームと見なされていることを示す。

Mansourは「市場と正確性がもたらす真実が、従来メディアの主観や論争のノイズに取って代わる」と語る。今後は証券会社との連携拡大、報道機関との協業深化、取引可能なイベントカテゴリの拡充などで、予測市場の大衆化を加速させる方針だ。壮大なビジョンだが、10億ドルの資金と110億ドルの評価額がその実現を強力に後押しする。

コンプライアンス逆境から主流認知への逆転劇

Kalshiの成功は平坦な道のりではなかった。同社はかつて違法ギャンブル運営や胴元・個人投資家との賭博行為で非難され、コンプライアンスがビジネスの障害となった時期もある。しかし、この徹底したコンプライアンス重視がCFTCから完全承認を勝ち取り、米国唯一の連邦規制下の予測市場となった。この地位こそが、CNNがKalshiを選びPolymarketを選ばなかった最大の理由だ。

疑念を乗り越え、CNNの独占パートナーとなったKalshiの歩みは、厳格な規制業界においてコンプライアンスが短期的にはコストや制約となっても、長期的には競争障壁と主流の信頼獲得の唯一の道であることを証明している。Polymarketは取引量こそ多いが、国際ユーザー主体で米規制当局の調査が長引く中、主流メディアはパートナー選定でより慎重になる。

110億ドルの評価額で、Kalshiは予測市場業界で最高評価の企業となった。この評価はどんな前提に基づくのか。投資家は、予測市場が主流メディアや金融プラットフォームの標準データ源となれば、米市場のコンプライアンスリーダーであるKalshiが急成長市場の主要シェアを獲得すると見ているのだろう。もし予測市場が世論調査や格付機関のようなインフラになれば、リーダー企業の評価が数十億ドル規模になるのも納得できる。