ブラックロックのCEOラリー・フィンク（Larry Fink）は、資産のトークン化（RWA）を「1996年のインターネット」になぞらえています。この言葉は、伝統的金融が暗号時代に目覚めつつあることの始まりと捉えることができます。

彼の意図は、暗号金融は新しい金融インフラであり、潜在能力が非常に高いものの、まだ初期段階にあるということです。まるで1996年のインターネットのように、多くの人々はそれが既存の状況を根本的に変えることに気付いていませんでした。1996年、人々は雑誌や新聞を読み、ラジオやテレビを見ていましたが、今では新聞や雑誌はほとんど見られず、代わりにネットニュースやソーシャルメディア、ライブ配信、動画が主流です。

1996年のインターネットを振り返ると：

• 大多数の人がダイヤルアップ（56Kモデム）でインターネットに接続し、速度は遅かった；
• 速度は遅く、ウェブサイトは見た目が悪く、コンテンツも少なく、「インターネットは役に立たない」と感じていた；
• Amazonは設立1年、eBayは誕生したばかりで、Googleは2年後に登場；
• 専門家やガジェット愛好家は積極的に動いていたが、ウォール街や伝統的な企業は「インターネットはおもちゃだ」と嘲笑していた；
• インフラ（ブロードバンド/光ファイバー/データセンター/ブラウザ）はまだ完全には整っていなかった；

しかし、その当時、先見の明がある人々はすでにインターネットの未来を予見し、「これが最終的にすべての業界を変革するだろう」と声を上げていました。

現在の「資産のトークン化」の状況を見てみましょう：

• イーサリアムやL2エコシステム、Solanaなどは、トークン化を支える基盤インフラを初期構築しています。

既に株式、債券、ファンド、プライベートエクイティ、ステーブルコイン、金、不動産などの実資産をトークン化し、チェーン上で暗号資産に変えることが可能です。ただし、チェーンのTPS（トランザクション毎秒）、コスト、プライバシー、安全性、コンプライアンス、ホスティング、規制といった課題に直面しており、これらはまだ十分に解決されていません。これらの困難は、まさに1996年のインターネット黎明期と似ています。ただし、現時点では、イーサリアムの進化やインフラの状況は、1996年より少し進んだ段階にあります。

• 市場規模は非常に小さいものの、成長速度は加速しています。

2025年時点でのRWAの総規模は数百億ドルに過ぎませんが、世界の投資可能資産総額は4兆ドル超であり、RWAの占める割合は1％未満です。しかし、最近2年間、機関投資家の参入により、その伸びは顕著になっています。

• 伝統的な金融機関の中には、まだ観察や嘲笑を続けるところもあります。

一部の銀行や機関は「ブロックチェーンは仮想通貨の投機だ」「トークン化は安全でない」といった意見を持っています。

これは、インターネットが単なるおもちゃだと当初言われていた状況に似ています。伝統的な小売業者も、アマゾンがオンラインで商品を販売するのはおかしいと嘲笑していたのと同じです。

• 一部のトッププレイヤーはすでに全投資を決めている

しかし、銀行や機関投資家が関心を示さなくても、トレンドを見て動くプレイヤーはいます。例えば、ブラックロックはすでに参入しています。2024年には、イーサリアムを基盤としたドル建てのマネーマーケットファンドBUIDLをリリースし、継続的に成長しています。ゴールドマン・サックス、フィデリティ、フランス銀行なども、トークン化された債券やファンド、不動産の探索を進めています。これは、まるで1996年から1998年のインターネット黎明期に多くの企業が様々な試行錯誤をした時代に似ています。

伝統的なプレイヤー以外にも、多くの暗号資産プレイヤーやスタートアップが未来の主役となるでしょう。AAVE、Uniswap、Hyperliquid、Lighter、Polymarketなどが例です。彼らの中には、後から追随者に取って代わられる者も出てくるかもしれませんが、まだ多くの新規参入者が道を歩んでおり、今後5〜10年は暗号資産を活用したスタートアップの黄金時代になるでしょう。

このトレンドの見通しが正しければ、

今後5〜15年であらゆる資産の完全トークン化が実現し、最も流通しやすいステーブルコインから始まるでしょう。現在、ステーブルコインは資産トークン化の成功例となっています。次に、株式、債券、ファンド、音楽著作権、炭素排出権などが続き、最終的には金や不動産などの最も難しい資産にまで及びます。24時間365日のリアルタイム取引、グローバルな流通、秒単位の決済が可能になるのです。

今後5年以内に、イーサリアムなどのパブリックチェーンインフラの大幅な向上により、取引コストは低下し、受け入れ可能なレベルにまで下がるでしょう。プライバシー技術や規制の整備も進み、資産の取引と流通はますます現実的になります。

個人投資家がマンハッタンのビルの一部分の所有権を購入できる時代は、10〜15年以内に実現する可能性があります。また、すべての金融商品が「スマートアセット」としてプログラム可能になり、自動的なバランス調整、配当、再投資、担保の自動トリガーなども行えるようになるでしょう。

要するに、現時点ではトークン化はあまり信頼されていませんが、1996年のインターネットと同様に、土壌は未成熟でおもちゃのように見えました。しかし、現在のインターネットは、当時のほぼすべての構想を実現しています。未来の5〜15年は、暗号金融スタートアップの最良の時代になるでしょう。