中国の暗号資産長者が金を買い漁り始めた時、あなたはとっくに気付くべきだった：市場はすでに変わっている

2025-12-09 02:09:06

シンガポールの金庫からオンチェーンのゴールドトークンまで、中国の暗号資産富豪たちは人類最古の安全資産に静かに布石を打っている。呉忌寒は最高級の金庫を買収し、詹克団はTetherと手を組みオンチェーンの金庫を構築。この富のゲームは今、ルールを書き換えつつある。

（前提知識：観察》金とハイテク株は押し目買いされているが、ビットコインだけが人気薄）（背景補足：中国当局が初めてステーブルコインに言及、StableCoinのグレーな幻想時代が終焉）

シンガポール・チャンギ空港の北、車で12分。世界有数の民間最高セキュリティの金庫が滑走路の端にそびえ立つ――Le Freeport（リ・フリーポート）自由港だ。

建設費約1億シンガポールドルのこの建物は「アジアのフォート・ノックス」とも呼ばれる。窓は一つもなく、年間を通じて温度21℃・湿度55％に保たれ、美術品の保管に最適な環境となっている。

厳重な鉄の扉の向こうには、数億ドル相当の金・銀や希少な美術品が眠っている。これらは通関不要、税金も一切かからない。

3年前、アジア最年少のビリオネア暗号資産家の一人であるビットディア創業者・呉忌寒は、約4,000万シンガポールドル（約2.1億元人民元）で、この建設費が1億シンガポールドルとも噂される金庫を買い取った。

この買収は当時ブルームバーグが裏付け、買い手の背後には呉忌寒率いるビットディアがいた。当時は「仮想通貨界の大物が本業外のことをしている」と揶揄された。「ビットコインを掘る方が儲かるのに、なぜオフチェーンの金庫を買うのか」と。

しかし、2025年に金が1オンス4,000ドルを突破した今、視点を変えれば、この買収は「先見の明ある絶妙な一手」だったと言える。

呉忌寒がLe Freeportを手に入れたのは、コンクリートや鉄の扉だけを買ったのではない。この要塞はもともと超富裕層と機関向けに設計された保税飛地であり、高度なセキュリティとプライベートな展示空間、そして複雑な関税障壁を優雅に回避できる。

この事実は、ビットコインで一夜にして富を築いた中国の富豪たちが、最も古い安全資産「金」にすでに目を向けていたことを示している。

金の老人ホーム

2010年5月、Le Freeportはシンガポールで正式に稼働を開始。この建物は当初からインフラとして設計され、空港に隣接し、内部通路は滑走路まで直結。貴重品が飛行機から金庫に運ばれるのに数分しかかからない。

シンガポール政府の支援姿勢は株主構成に表れている。国家文物局や国家芸術理事会がLe Freeportの最初の株主に名を連ねていた。

当時のシンガポールは「貿易港」から「資産港」へと進化中で、Le Freeportは世界的なアート＆ウェルスマネジメントセンター計画に組み込まれ、消費税ゼロ倉庫計画（Zero GST Warehouse Scheme）にも乗り、世界でも数少ない免税・保税・クロスボーダー決済機能を兼ね備えた金庫となった。

こうした制度設計で、Le Freeportはすぐに世界の富裕層・機関投資家の注目を集めるようになる。大口の現物資産を受け入れられるだけでなく、非シンガポール籍保有者にも開放されており、入国手続きや関税も不要。

たとえば5,000万相当のピカソの名作も、10～30％の税率がかかるところ、Le Freeportに預ければ数千万単位の税負担が省ける。

Le Freeport内部の写真は公開されていないため、隣の新設金庫The Reserveの公開画像から内部の様子を推察できる。

ここにはかつて世界トップクラスの機関テナントが集まっていた。世界有数の金取引業者JPモルガン、クリスティーズ傘下CFASS、UBSやドイツ銀行など国際金融機関も多く、大量の金がここを経由してクロスボーダー送金・保管された。

しかし一部の国が高級品やオフショア資産の監督を強化し始めると、これらの機関は次々と退去。Le Freeportも長期赤字に陥った。

2017年以降、Le Freeportは市場で「問題資産」とされ、オーナーは売却を模索。5年後、ようやく呉忌寒が買い手として登場した。

当時、暗号資産市場は本格的な冬を迎えていた。LUNAアルゴリズム型ステーブルコイン崩壊でオンチェーン信用システムへの疑念が広がり、Three Arrows Capitalの破産、CelsiusとBlockFiの連鎖破綻、去レバレッジの波が伝播し、最終的にFTX帝国の崩壊で取引相手リスクが全面的に露呈した。

その間、中国の暗号資産起業家・呉忌寒はBitdeerを通じて約4,000万シンガポールドル（約2.1億元人民元）で、この「厄介者」とされた金庫を買い取った。

呉忌寒は世界最大のマイニング機器メーカー「ビットメイン」を共同創業し、一時は世界のビットコインハッシュレートの約75％を握る、前サイクルを代表するキーマンの一人だった。Bitdeerを分離した後、シンガポール永住権を取得し、ビットメインから離脱。事業の重心をBitdeerのハッシュレートとインフラビジネスに移した。

この買収について彼は多くを語っていないが、ブルームバーグの取材には認めている。

今やLe Freeportの公式サイトにも、単なる金庫ではなく「選ばれた少数のためのプライベート体験」と明記されている。

仮想通貨界隈の人々は一生かけて秘密鍵の保管を研究しているが、本当の大金はすでにシンガポールの金庫に眠っている。家族信託の書類一式や、スチールプレートに刻まれた助記詞などだ。

中国富豪だけでなく、インドや東南アジアの新興富裕層も、呉忌寒のLe Freeportの新たな常連となっている。

Le Freeportは顧客リストを公開していないが、国際オークションハウスの情報からある程度は推測できる。多くの美術品が落札後「直接入庫」し、市場には戻らない。

同様のルートは東南アジアでも見られ、上場ビリオネアらが一部キャッシュアウト資金をそのままLe Freeportに移している。金や銀の延べ棒、ハイジュエリー、限定版パテックフィリップ、クラシックカー、希少な美術品などが取引現場から直接この秘密の倉庫に運ばれる。

読者の中に「金庫会員」予備軍がいるかもしれないので、金預け入れの流れも明記しておく。

入口には武装警備員がおり、訪問者はパスポートでネット経由の身元チェック。指名手配など高リスク人物でないか確認される。コア金庫エリアに入るには、少なくとも5つの関門――身分確認、バイオ認証、防弾ドア、持ち物検査など――を突破しなければならない。庫内外には100台以上の高解像度カメラが設置され、7×24時間死角なしで監視されている。さらに「30キロの銀塊、12.5キロの金塊」という物理的な困難もあり、仮に侵入者がいてもほとんど運び出せない。

だから外の人が「金はまだ上がるのか」を議論している間に、内側の人たちは「15万元のロマネ・コンティを何百本保管するか」や、「ピカソやレンブラントはどの棚・どの列に掛けると奥様が写真を撮る時番号がきれいか」などを話し合っている。

一般人のゴールは公的年金口座だが、アジア富豪のゴールはシンガポールのこの窓のない壁の中だ。

もちろん、金庫は物理的空間の優位性に過ぎず、金産業チェーンでより大きな発言権を得たいなら、さらに上流に食い込む必要がある。